TwinTrip
2004年04月23日
プラトニック・セックス
カッコイイわけじゃない。
特別な才能を持ってるわけじゃない。
資産が腐るほどあるわけじゃない。

けれど女に困ったことは無い。

この場合の女に困る、ってのは当然セックスの話。
常に3、4人と適度な距離で付き合ってて
そんな気分になったら連絡する。
まあ誰も捕まらなかったことが無いってのは
単に運が良かっただけってわかっているけどな。

俺の魅力は何かって?
セックスだよ。
みんな俺とセックスしたがる。

セックスがウマイ、とは思わない。
あんなものはミズモノだから。
いろんな要素が絡み合って結果がついてくる。
必要最低限のマナーさえ守ってれば問題ない。

心配するな。
こんな話したのオマエが初めてだよ。
ははは。
抱かれる気がないのに抱かれる心配すんなって。





30分後の今。
抱かれるつもりの無かった女と
抱くつもりの無かった俺が繋がっている。

もっとだ。
もっと俺を必要としてくれ。
喘いでも善がっても何でもいい。
とにかく俺が必要だと示してくれ。

セックスなんて反吐が出そうなほどキライだ。
でも俺はセックスでしか必要とされない。
それならいくらでも抱いてやる。

もっとだ。
とにかく俺が必要だと示してくれ。

「こころ を 支える ために からだ を 求めた」

未だ求め続けてる。
− ユウジ -
プラトニック・セックス

彼はベットに腰掛け、ため息をついている。
その様子を見て、やっぱり彼に話したのは失敗だったかなと思った。

付き合って1年、とても順調だった。
今日は1年目のお祝いで彼の好きなレストランへ食事に行った。
この1年、私は一滴もアルコールを口にしなかった。
彼は嬉しそうでとても機嫌が良く、普段はムリに勧めることのない酒を
おいしいワインだからと、いいから一口飲んでごらんと、私に何度も言った。
いつもどおり断ればよかったのに、私は飲んだ。

ワインは熟れた果物のような匂いを放ち
染み込むような、焼け付くような感触を残し
難なく喉を通って行った。
ワインが胃に達し、ポッと胃が熱くなったような感じがした。

あぁ、あんな思いをして止めていたのに。

私は1年前までアル中、アルコール依存症だった。
毎朝、嘔気と共に目覚め、酒を飲まないと嘔気も止まらず頭もしゃっきりしなかった。
いつも誰にもわからないように酒を飲み、誰にもわからないように酔っていた。
そして少しでも酔いが覚めてくると
手の平からじわじわと発汗しはじめ、徐々に体が震えた。
酒に荒れた胃腸は毎日下痢と嘔吐を繰り返し
酒以外にほんの少し口にする食物の栄養も摂取できず、どんどん痩せていった。
騒がず泣き叫ぶ事もなく酒を飲み、私は静かに静かに壊れ、狂っていったのだろう。

仕事関係の集まりで彼に会い、お互いにどんどん惹かれていき恋をした。
恋愛は私から酒を遠ざけてくれた。
この1年、時間さえあれば、いや何とか時間を作り出し
彼と会い、会えば必ずセックスをした。
彼とセックスをすると心が温かく満たされ、不安は消え去り
私は微笑みながら眠ることができた。

何の事はない、私の依存はアルコールから彼とのセックスへと移行しただけだった。
喉を食道を焼くような強いアルコールの代わりに
甘いチョコレートのような彼とのセックスを
「こころ を 支える ために からだ を 求めた」

彼はまだベットでため息をついている。
「大丈夫なのよ。
アルコール中毒は1回大酒を飲んだくらいではならないの。
少量でも毎日飲まずにはいられなくなる方がいけないの。
ねえ、だから、私は大丈夫だから。」

「僕は知らなかったんだ。君がアルコール依存症だったなんて。
知ってたら飲ませたりしなかったのに・・・。
どうしよう、どうしたら・・・。」

私は一人で服を脱ぎ、彼に抱きつきながら
ねえ、大丈夫だから。おねがいだから抱いて欲しいの
と言い続けた。

どうしても彼を手放すわけにはいかない。
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