TwinTrip
2004年04月02日
ロード・トゥ・パーディション
親父が定年退職した。
厳格で曲がったことの大嫌いな親父。
そんな親父にとって刑事と言う職業は天職だった。

数ある事件を解決した親父。
中でも女を殺して皮を剥ぐサイコ野郎を逮捕した時は
心の底から感動した。
俺にとって親父は英雄だった。

今日はささやかながら定年のお祝いだ。
女房の手料理でもてなす為、おふくろと一緒に呼んだ。
親父はリビングで孫と、つまり俺の息子と遊んでいる。
無邪気にはしゃぐ息子を見つめながら思う。
俺も親父のように英雄になれるのだろうか。

息子が押入れの奥にあるおもちゃ箱を取ってくれと親父にせがむ。
左膝に古傷のある親父には重過ぎる箱だった。
代わりに俺が取ってやった。
軽々と重いおもちゃ箱を持ち上げた俺を見て
息子が瞳を輝かせながら喜んだ。

俺と息子のやりとりを嬉しそうに目を細めて眺めながら
親父が言った。

「父親は皆、息子にとって英雄となる」

俺はハッとして頷いた。
親父は親父、俺は俺だ。
等身大で息子と向き合うだけで良いんだ。
− ユウジ -
ロード・トゥ・パーディション
そういえばさ
最近はなんだかプライドって言葉が軽く使われすぎていると思うね
適当に使われていると聞いてて恥ずかしくなっちゃうよ

それは、決して軽々しく振りかざすような言葉ではなくて

一つの事柄や物事に関して
経験による実力と実績に裏打ちされたもので
男が自分の力で自分の手で自分の中に蓄積してきた
例えるなら身に付いた質実さのようなものだよ

だから生半可な事じゃびくともしないんだ
だから、「プライドが傷つけられた」なんて言葉、
本当の男なら恥ずかしくて口に出して言えやしないんだよ
そんなことで傷ついてしまうものなんてプライドなんかじゃない

ただの見栄であり、
傲慢、思い上がり、うぬぼれ
せいぜい自尊心てところだ

だから本物のそれを
自分の中に作り上げて欲しい
できれば俺からそれを感じて欲しい
息子に伝えたいのはそれだけだよ
男親にできることなんて、そんなことだけだ
あとはなんだ?
健康第一くらいだな

と、昨夜、居酒屋の隣のテーブルで酔っ払ってるオッサンが言ってた
推定55歳、バーコードハゲ、赤ら顔のよれよれスーツ

ハゲ親父、あんたすげーカッコイイよ!
「父親は皆、息子にとって英雄となる」
俺もそう言えるようになりてぇ。
ハゲはやだけどな。
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