TwinTrip
2004年01月16日
ユー・ガット・メール
どうしてこんな事になったんだろう。
最初は良いことだらけだった。
パソコン買ってからかな。
何かの懸賞が当たったり、副業で始めた仕事が
あっさり軌道に乗ったりでさ。
おまけにモデルの子と仲良くなって
ついには彼女になったんだ。

ギャンブルでも何でもそうなんだけどさ。
流れ、ってあるだろ?
これは逃しちゃいけない流れだ!って思ったよ。

だから彼女の勧めもあって大勝負に出たんだ。
副業で稼いだ資金を全部つぎ込んでね。

ビジネスと言っても所詮はギャンブルさ。
ハイリターンが望めるのはハイリスクを負うからだ。
結果は散々たるものだった。

しかも副業で稼いだと思っていた資金も
よくよく考えてみたらほとんどが借入金さ。

あーあ。
もうこりゃ死ぬしかないな。
俺が死んだら彼女は泣くかな?
ん?
彼女?
いろいろ金策に回ってくれてるよ。
ホント俺にはもったいないぐらいの彼女。
もう1ヶ月ぐらい会ってないなぁ・・・。
そうだ、そろそろ止めないと。
頑張っても無駄なんだから言ってあげなきゃ。

「おかけになった番号は現在使われておりません」

おかしいな。
番号合ってるのに。

懸賞?
ああ、何だか覚えてないけど俺が応募してたみたい。
浄水器がタダでもらえたんだ。

うーん、やっぱり繋がらないな・・・。

で、それからその浄水器を販売する副業始めて
営業成績が評価されてパーティーに呼ばれて
彼女と知り合ったって感じかな。

ホントだよ。
何で首かしげてんだよ。


『運命のいたずらは、一通のEメールから始まった・・・』
− ユウジ -
ユー・ガット・メール
彼女は取引先の会社の受付嬢だったんだ。
誰でも社名を知っているようなでかい会社のね。

その会社の社員のメールアドレスは
社員のフルネーム@会社名 .com
だから、名前さえわかれば彼女にメールを出すのは簡単だった。

いくら誘っても振り向いてもらえなかった僕は
だんだん彼女が憎らしくなり
マンガ喫茶のパソコンで適当なフリーメールを作って
彼女にメールを送った。

「お前の秘密を知っている ばらしてやる」

ただの嫌がらせだ。
根も葉もない、嘘。本当は何も秘密なんて知らない。

彼女が少しでも嫌な気分になればいいと思っただけだ。
思い当たる事がなくても
そんなメールが送られてきたらイイ気分じゃないだろ?

ただそれだけのつもりだったのに。

「運命のいたずらは、一通のEメールから始まった...」

どこでどうバレたのか、
そんな事をしそうな人間は僕しか心当たりがなかったのか、
とにかく彼女は嫌がらせメールの犯人が僕だと気づいたらしい。

そして彼女は今まさに、僕を殺そうとしている。

帰宅途中の暗闇で包丁を手に襲ってきた彼女
もう何度刺され、切られたかわからない。

とても寒いし意識も朦朧としてきた。
彼女がつぶやくように何か言っている。

「あなたが悪いのよ。
アレをバラすなんて脅すから
なんであなたがそんな事知ってるのよ
あなたが悪いのよ・・・」

何度も、本当は何も知らないんだと言ったけれど
つぶやき続け、切りつけ続ける彼女
頬に僕の血が飛び散って
点々と赤く染まっている
ああ きれいだな

ぐったり仰向けに倒れる僕の胸に
彼女が包丁を深々と刺し込んでくる。

でも、アレって
彼女言う「アレ」って
いったい
なんだったんだろうな・・・
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