TwinTrip
2003年10月24日
ダンサー・イン・ザ・ダーク
・・・・・カットォ!!
1時間ばかり休憩とする!

またか・・・・。
土台ムリな話なんだよ。
設定に無茶があるクセに予算削られてるんだから。

近未来の映画を撮る為に
百年杉のあるこの島に来ている。
これだけ自然豊かな場所で
あと1ヶ月以内に撮らなきゃいけないのが
"全ての生物が死滅した未来"だと?
ムリに決まってるだろうが!

何度やっても動物やら何やらがフレームイン。
聞いただけではどんな動物かもわからない、
そんな鳴き声は四六時中だ。

頭を抱えてる俺の元へスタッフの1人がやって来た。
提案がある?
言ってみろ。
ほう。
確かに効果がありそうだな。
わかった。
考えておこう。

嬉しそうにスタッフは帰っていく。

どんな提案かって?
火を焚くんだってさ。
笑うなよ。
ありきたりでシンプルだがそういうのが
最も効果が高いんだぞ?

でもな。
これだけの大自然で火はダメだ。
こんなに素晴らしい森を俺たちは既に汚している。
これ以上汚す気は毛頭無い。

今度は小鳥がさえずってる。
ここでは一羽が鳴くと共鳴するかの如く
たくさんの小鳥が鳴きだすんだ。
ほらな?

結論としてはこうだな。

「魂の歌声は、誰にも止められない」

小細工なしで行こう。
撮りたい物が撮れるまで何度だってやればいい。
− ユウジ -
ダンサー・イン・ザ・ダーク
・・・・・あぁ、いぃ・・・イクっ、イクよ・・!
息を荒くしながら男がつぶやきそしてイった。

はぁ・・・・。
身体をビクビクと震わせながら私はため息をつく。
客を騎乗位で射精させ、満足している。

もう7、8年も
この新宿で体を売っている。
店に在籍したり
ヒモがついたこともあったけど今は一人。
フリーの街娼が性に合っている。
新宿の水も私に合っている。

一人で街に立っていると
危ない客やヤクザに絡まれることもある
そんなことは日常茶飯事だ。

客を引こうと物色していると
顔見知りの娼婦が一人やってきた。
年を食った落ち目の街娼だ。濃い化粧と夜道の暗さでごまかしているけど。
不景気で客が少ないとボヤいている。
ふぅん。
まあ、みんな同じようなものよ。
適当に話しを合わせておく。

トボトボと娼婦は自分の場所へ戻っていく。

不景気だって?
そんなの私らには関係ない。
本当よ。
イイ仕事すれば
客はまた私を買ってくれる。

でもね
客とのセックスで本気で感じていると
他の娼婦たちからバカにされる
安い金で体を売り本気で感じているなんてよっぽどのスキモノだって。

そうよ。娼婦は私の天職だもの。
どんなイヤな客と寝ても、イイ声で鳴くって評判なの。
きっとあなたも一度聞いたら忘れられなくなるわよ。

そう、
「魂の歌声は、誰にも止められない」の。

明日もこの薄汚い新宿のラブホテルの森で
耳を澄ませてみてよ。

この喧騒にまぎれてどこかから
きっと私の歌声が聞こえるはずだから。
− ワタル -
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